戦前、国民にとって天皇陛下は雲の上の存在でありました。
大部分の国民は、天皇陛下の御姿を拝するどころか
肉声も聞くこともまれであった時代でありました。
昭和二十一年より始まった、昭和天皇の全国御巡幸。
戦前ではありえないシチュエーションでの陛下との面会、
また天皇陛下から激励のお声掛けを受けた多くの人々は
復興への意志をあらためて強くしたと聞いております。
鳥取県への行幸は昭和22年の11月
私ども依山楼岩崎が御宿泊の用命を賜ることとなり、
離れ三朝閣(さんちょうかく)が御座所となりました。
その後、昭和40年に昭和天皇皇后両陛下の行幸啓を、
昭和60年には昭和天皇、常陸宮御夫妻、三笠宮宜仁様、
高円宮様のご宿泊を賜りました。
最初にご利用いただいた離れ三朝閣にこんなエピソードがあります。
二度目の御宿泊となった昭和40年は館内の特別室(現601号室)に
お泊まりいただきました。
その折り、昔の部屋が懐かしいし皇后陛下にも見せたいので
ぜひ見たいと急に仰せになり、わざわざ予定にないコースを
お運びいただいとのこと。
さらに戦後の御巡幸のこと、
三朝閣のことを懐かしんで御製を残されました。
たたかひの はててひまなき そのかみの
旅をししのぶ この室をみて
~戦争が終わってすぐにした旅のことが
この部屋(当館三朝閣)を見ていると
懐かしく思い出される~
当時の入江相政侍従長に書をしたためていただいたものを額にし、大切に保管しています。
離れ三朝閣は記念の室として現存。
宿泊室としては使用していませんが、
当時の調度品、記念の写真などを展示し
ご来館のお客様にご覧いただいています。
【創業90周年】最終回につづく
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